4■スコールの日記「酒場で」
ラグナに雇われて、エスタ大統領官邸の護衛を引き受けてから数ヶ月。
SeeDたるもの、任務は誇りだし、仕事も選ばないが・・・どうも、身内――それも一七になって初めて再会した父親の側で働くのは、何やらやりにくい。
「護衛」なんていう大義名分はタテマエだけで、本当は親子水入らず、父親の側に息子がいた方が良かろうという周囲のいらない気遣いのせいだけで、俺はエスタに縛られている。
だからこそ、今回はラグナからの任務で、「何でも屋」に逢いにミッドガルまで出て来られたのは幸いだが・・・。
待ち合わせの酒場に着いていきなり、どうして他人の厄介ごとに巻き込まれなきゃならないんだ?
酒場の扉をくぐると、ひと目でチンピラとわかる輩、数人に囲まれた男から声をかけられた。
男の顔はよく見えないが、陽光のごとき金髪が、真珠の肢体に映えていた。
「助けてよ、そこの色男! 悪漢にからまれて、困ってるんだ」
華奢な風情に似あわず熟練の戦士だということは、その慣れたような声色からすぐに推察できた。
要するに、自分で相手するのは面倒くさいから、あとを頼むといったところだろう。
「・・・他人のもめごとに興味はない。大方、自分で巻いた種じゃないのか?」
そう言い返すと、金髪の戦士ははさも面白そうに、いたずらっぽく返してきた。
「他人事じゃなくしてあげようか?」
戦士は周囲のチンピラを見回すと、信じられないことを口走った。
「お兄さん達、今、酒場に入ってきたあの人も、相当な美人と見たよ?
獲物がオレだけじゃ物足りないだろ? どうせなら、あの人も一緒に連れていって遊ぼーよぉ」
――悪漢にからまれて、困っていたんじゃないのか、あんたは!?
「言われてみりゃあ・・・なかなか・・・。この辺ではお目にかかれないタイプの上玉だなぁ」
チンピラどもが、俺の側によってきた。酒くさい息を間近に感じ取れる。
・・・うざったい・・・。
俺は瞬時に精神集中すると、スリプルの印を切り、チンピラどもを眠らせた。
一瞬で数人のチンピラがぱたぱたと崩れ落ちた。
唯一、呪文に抵抗して起きていたボス格の男には、金髪の戦士からブレイクの呪文を見舞われ、捨てゼリフを吐く間もなく石と化した。
「乱闘にならなくて良かったぁ。店のもの壊すと、弁償だもんね」
奇妙に明るい声で、金髪の戦士がカウンターから立ち上がり、俺の側までやってきた。
間近で、その顔を見る。
「・・・あんたか。クラウド=ストライフ」
少々疲れ気味に、俺はその戦士の名を反芻した。
<スコールとクラウドが出逢いました〜。
いずれ、この二人は、ジタンとも出逢わせる予定ですvv>
|