■ FINAL FANTASY MIX ■

† World Tutorial -邂逅- 3 †



6■ブランクの日記その1「タンタラス始動」

 久しぶりに、ボスからの招集がかかった。
 劇団ではない、「盗賊団タンタラス」としての、任務の告知。
 劇場艇プリマビスタの船影が西日に揺らめく、リンドブルム郊外の夕方――。
 一同に会した俺達タンタラスのメンバーを前に、ボスが発した第一声を聞いたとき、俺はこの任務を降りるぜと喉の奥まで出かかった。
「ジタンがR・Sに囚われた」――。

 ジタンは、世界最大のヒュージマテリアを盗み出すため、エスタの裏オークションに潜入していたはずだ。
 何の因果で、怪しげな人身売買組織にとっ捕まったんだ?
 あの単純ストレート猿野郎、後先考えずに行動するから、俺達に尻ぬぐいが回ってくる。
「・・・タンタラス内では、ボスの言うことは絶対の鉄則だが、イマイチ気が乗らねえ仕事(ヤマ)だな」
 睨めつけるようにふっかけると、穏健派のマーカスが仲裁に入る。
「兄貴、ジタンさんはオレ達の仲間っすよ! 助けに行くのが筋ってもんじゃないっすか!」
 思った通りの反応だ。そこで、俺も、マーカスが予想しているであろう返事を返した。
「ヤマなら惜しみなく働かせてもらうぜ。けどよ、「救出」ってのは仕事じゃねえ。行くなら有志を募りな」
 ボスの瞳がゴーグルの向こう側で、愉快そうな光をたたえたように感じた。
「ブランクよぉ、突っ張るのもほどほどにしておきな。一番ジタンの奴を助けたいって思ってるのは、てめえじゃねえのか?」
 紅一点のルビィが、呆れたように補足した。
「素直やないなあ。仕事やなく、趣味で行くっちゅうんやったら、ええんやろ? ほんなら、うちが、有志募ったるで」
 シナがルビィの台詞に続けた。
「栄えある『ジタンさん救出作戦』メンバーの、第一志願者は・・・」
 その場に居合わせたタンタラス団の全員が、一斉に見事なタイミングで、俺のことを指さした。
「・・・・・・・・・」
「沈黙は、了承の意味やて解釈すんで、ブランク?」
 ルビィがにっこりとウィンクした。
 こうして、俺の意志なぞお構い無しに、ジタン救出作戦が開始されたのだった。
 ・・・・・・こいつら全員、いつかアレクサンドリアの内海に沈めてやる!




<FF9のプレイを開始したため、
やっと主要なFF9キャラを出せるようになりました(^^)
「タンタラス団」の存在そのものが凄くツボなので、
ワクワクしながら書いてます(笑)。>


7■ブランクの日記その2「『世界警察』エスタ」

 引き続き、ジタン救出作戦の打ち合わせ。
 ボスが、意気込む俺達をたしなめるようにつけ足した。
「今回のヤマでは、ひとつ注意すべき点がある」

「仕事の内容は、あくまでジタンの救出だ。得体の知れねえR・Sに深入りはすんじゃねえぞ」
 少しがっかりとした口調で、マーカスが応じた。
「俺達の力で、R・Sの全貌を暴いた方がいいんじゃないっすか? あの組織、何かとヤバい噂を聞くっすよ。早いうちに、叩いておいた方が・・・」
「勘違いすんじゃねえ。義賊を気どるのは嫌いじゃないが、俺達は正義の味方じゃない。それに――」
 ボスが、鋭い視線で一同を見回して注意を促した。
「『世界警察』エスタが動いてる。俺達タンタラスの存在を気取られるわけにはいかねえ」
「エスタ・・・!」
 居合わせた団員全てに戦慄が走った。
 アレクサンドリアといい、リンドブルムといい、近場に封建主義の国々しかない俺達には想像もつかないが、エスタというのは、民に選ばれた大統領を仰ぐ共和制の都市国家だ。
 君主(あえてこう書く)ラグナ=レウァールはまだ若いが、卓越した魔法と科学の力で、外界との接触を断ってさえ自給自足していけるという、信じられないほど強固な国だ。
 けして自らが主張したわけではないが、国際紛争の仲裁をかってでることが多いため、「世界警察」の称号を冠せられている。
 そこが、R・Sに対して、動きを見せているのだ。
「おかしいじゃないか。なんで天下のエスタが、民間組織にすぎないR・Sに対して働きかけるんだ?」
 俺は腕組みしながら、ボスに問いかけた。
「さあな。あっちにはあっちの事情があるんだろ。
 勿論、表立ってではないが、すでにラグナとかいう奴は、己の私兵をR・Sの潜入調査に向かわせやがった。
 情報によると、片やSeeD、片やソルジャーの精鋭らしい」
 ボスは一度そこで言葉を切って、軽く深呼吸した後、俺達に檄を飛ばした。
「いいか。俺達タンタラスは、こいつらより先にジタンを救出しなきゃなんねえ。
 エスタ側の到着前に、R・Sからジタンの足跡を消してしまわねえと、何かと厄介なことになるからな」
 ・・・俺達は、人身売買組織R・Sのみならず、SeeDやソルジャー、そしてその後ろに控えるエスタまで相手にしなきゃならないのか。
「話し合ったら、俺達と協力してくれそうっすけどね、エスタは・・・」
というマーカスのため息に、ボスは苦笑して、
「盗賊と警察が手を組むわけにはいかんだろ」
と、たしなめた。
 だが、ボスの眼にははっきりと、「そういう奴らと組んでの仕事もやってみたいもんだ」という叶えがたい夢の光を見て取ることが――できた。




<タンタラスがジタン救出に向けて、行動を開始です。
ジタン、スコール、クラウドの三人は、
人身売買組織R・Sにて、出逢うことになるでしょう。
・・・早く出逢わせたいんですが(笑)。>


8■R・Sの手記「煌紅の獣」

 人身売買組織「R・S」。
 設立されてまだ一年とたたないが、裏社会ではその雷名を知らぬ者はいない。
「R・S」というのはこの組織の通称「Rare Secret」の頭文字と謳っているが、本当の意味は、総帥たる僕の名のイニシャルになっている。
 僕はこの組織の長として君臨し、様々な「商品」を売りさばいて来た。
 象牙の少女も、白磁の少年も、黒真珠の青年も、琥珀の娘も――金額という存在意義を与えられ生を穢された、数多の奴隷達。
 命が商品として生まれ変わる場所、それがオークションだ。

 僕の執務室のインターホンから無機質な声。
『珍しい商品を入荷しました。最低落札価格を設定して頂きたいのですが』
 大抵なら下の者が行う過程なのに、あえて僕の指示を仰ぐところをみると、よほどの掘り出し物がひっかかったか。
「つれて来い」
 指示すると、一瞬の間もおかず、執務室の扉の向こうに部下の気配が生まれた。
「失礼します」
 部下に引き連れられて、その身の手錠を小煩げに鳴らしつつ扉をくぐってきたのは、僕と同じ金髪碧眼の、だが、五歳ほど年下かと思われる華奢な少年だった。
 その肢体は確かに鍛えられたもので、象牙というよりは真珠のような暖かみのある白い肌と、落ち着いた鈍色の金の髪、光の具合で時折、紫がかる瞳が、見る者を魅了する。
 誰の目にも間違いない、トップクラスの商品だった。
 その中性的な見目とは裏腹に、僕に向けられる、闘争本能を奥に秘めた眼差しが心地よい。
「・・・あんたが、ここのボスかよ。オレはジタン・トライバル。
ここに宣言してやるぜ、この組織は間違いなくオレが潰すってな!」
 僕の瞳を正面から見据え、啖呵を切る。それを受け流し、僕は軽く素性を語った。
「僕はR・S。――本名は名乗る必要はなかろう」
 僕はジタンとやらから目を離さず、傍らの部下に「珍しいとは?」と尋ねた。
 無機質な返事。
「尾があります。さらに――怒りに打ち震えると、その身を煌紅の獣に変化させます」
「・・・怒りに? 試したのか?」
「はやる部下が、この商品に手をつけようとしまして」
「――その痴れ者は?」
「処刑しました」
 ふむ、と僕は頷いて、
「見てみたいな・・・お前のもう一つの姿を」
と、僕は煽るような視線を、目の前の商品に投げかけた。




<R・Sの総帥が出て来ましたが・・・、はい、カンの良い方なら、
彼が何者かおわかりになるかと思います。
 FF7・8・9のどれかの主要キャラで、イニシャルがR・S。
金髪碧眼のクールビューティで、ある企業のヘッド。
 彼は、善玉でも悪玉でも、どちらのステータスでも描きやすい上に、
組織の長としての品格と動員力があるので、お気に入りのキャラです(^^)
 原作では一人称は確かオレでしたが、他のキャラとの差別化を図る目的と、
私の中のイメージ先行で、僕と呼ばせています(しかし、クジャさんと重なってしまうなあ(^^;)。
 攻めっぽく描いてますが、彼は受けも好きです(笑)。
 その内、キャラ名を小説内で明かします〜。>

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