「あ・・・、や・・・ぁ・・・っ」
愛しい人の甘い吐息。
海賊砦からずっと味わいたいと思っていた、細い躯。
窓からは、細い月に照らされて白く輝く海が、穏やかな波音を届けてくる。
海の生活から開放され陸へと上がったハクヤは、待ちわびていた愛しいひとを存分に賞味する機会にようやく辿りついた。
「シュエリ・・・」
耳元でささやいた後、柔らかく唇に口づける。
「・・・ん・・・んっ・・・」
少し身を起こして、舌を深く絡める。蕩けそうな吐息と共に、遠慮がちに応じて来るシュエリの温かな舌を、己のそれで導くように何度もなぞる。
腹の下に横たわる愛しい少年は、軽い緊張にシーツを握り締めていたが、弱い唇から生まれる熱に酔うように、そっとハクヤの背に腕をまわした。
「ふ・・・」
唇を放すと、しっとりと朝露を宿したような睫を振るわせながら、竜胆(りんどう)の眼差しで見上げてくる。
「すまなかったな・・・砦で」
「・・・いいよ・・・僕のためだったんだから・・・」
「ああ、でも・・・」
今回ばかりは、反省する。
やっぱり、シュエリの艶姿を海賊共に晒すべきではなかったと後悔する。
期待にうっすらと紅のさす頬、口づけの余韻に色づく唇、象牙の歯から覗く甘やかな舌――今、自分を見上げて来る少年の、なんとあでやかなことか――
結局、あの後、商船を襲う段になって不必要に棍で敵をふっ飛ばしてしまったのも、ストレスのせいだろうなと苦笑する。
「・・・恥ずかしかったけどね・・・」
「ああ・・・悪かった・・・」
シュエリの髪をあやすように撫でて、その前髪に軽くキスをすると、そのまま唇をずらして耳元から首筋、鎖骨までを柔らかくはさみながらゆっくり口づけを施してゆく。
「あ・・・ぁ・・・・・・っ」
ハクヤの刺激に従順に震える躯。無垢な雛鳥は親の羽根に包まれて、どんな夢を見るのだろう。少女のごとく艶やかに眉根を寄せる少年に、少し背徳を感じなくもない。
そのまま胸元まで唇をずらし、胸の尖りを舌先でつつく。
「ん、や・・・っ」
敏感な果実はすぐに小気味良く立ち上がり、より一層美味しそうにハクヤをいざなった。
そのまま唇を押しつけ、貪るように吸う。
「あぁ・・・ッ!」
ひときわ高い声に羞恥を煽られたのか、思わず腕で顔を隠すシュエリ。ハクヤはその腕をやんわりと解くと、少年の顔を間近に覗き込んで、
「どうして欲しい・・・? 詫びも兼ねて、お前の望むとおりにするけど・・・?」
「ば・・・かッ、答えられる訳、無いだろ・・・っ」
顔を赤らめて困ったように目をそらすシュエリに、愛しさがつのる。
「でも・・・」
言いながらもハクヤの逞しい手は、シュエリの腰や大腿に触れるか触れないかの微妙な愛撫を施し続ける。
「じゃ・・・あッ、このまま・・・やめろって。い・・・言ったら・・・やめ・・・るわけ・・・?」
こんな簡単な愛撫でも、もうろれつが回らなくなって来ているシュエリが可愛い。
「・・・それは困るな・・・」
そんな台詞をシュエリが言うはずはないと分かっていたが、それでも言われたら死にそうだ。なにせ、海賊砦からずっとお預けだった獲物なのだ。
「じゃあ・・・いつもの通りで・・・ん・・・っ、いい・・・。それで充分・・・気持ち、」
気持ちいいから、と無意識に続けようとしたシュエリは、すんでのところで留まった。なんて恥ずかしい台詞だと、理性が働いたのだ。
「最後まで、言ってくれよ・・・」
シュエリの足を立てさせ、その指の間を裏側からなぞるように愛撫しながら、可愛いへそをチロチロと舐めてみる。
「あ・・・いや・・・だッ、ぜったい、いわない・・・から・・・ッ」
言われなくても、その甘い声で充分わかっているのだが。
「言われないとわからないぜ・・・?」
低く艶やかな声でシュエリを包みながら、ハクヤの唇はいよいよ下へ降りてきて、慎ましく固さを帯び始めている少年の最も大切な部分に辿りついた。
横から唇を当て、根元から先端まで順々に甘くはさんでいき、先端まで到達したら、裏側から弾くように舌でつるりと舐め上げる。
「あ、あん、あぁ・・・・・・ッ」
少年は背をのけ反らせ、頭を左右に振っていやいやをするが、許してもらえない。
そのままハクヤはシュエリの印をすっぽりと口で包み込むと、並びの良い歯と柔らかな舌で、今度は先端から根元までを順々に愛撫していく。
「や、もッ、もぉ・・・ハクヤ・・・ぁ」
やり場のない手でハクヤの髪を掴み抵抗するが、それも徐々に緩慢になってきて、印から先走る蜜と、ひくひくと震える腰が頂点が近いことを物語る。
「いいぜ、そのまま・・・」
己の口の中で徐々に固さを増すシュエリを感じ、ハクヤも熱を覚える。
袋を手のひらで揉みほぐし、最も敏感な根元の裏側を強く押さえ、印の先を導くように舌でつつく。
「あッ、う、うあ・・・ッ」
とどめとばかりに先端に歯を立てると、
「あ、あぁ・・・・・・ッ!」
他愛なく少年は頂点を結び、腰の震えと共にハクヤの口内へ蜜を放った。
難なくそれを飲み下す。微笑して、
「いつ聞いても、可愛い声だな・・・」
「は・・・、ば・・・か・・・っ」
シュエリは必死で荒い息を整え、白くかすむ意識を取り戻そうとするが、慣らされたハクヤの手で起こされた快楽は余韻が深く、しばし放心状態になる。
その機を逃さず、ひょい、とシュエリの躯を反転させ下を向かせると、そのまま腰を立てさせ、ハクヤは後ろの蕾に軽くキスをした。
「わ、だめ・・・!」
一気に理性が舞い戻る。指でされるならまだしも、唇や舌でそこを攻められるのは恥ずかしくて仕方ない。
「や、やめて、やめてよ・・・っ!」
抵抗するものの、しっかりと、それも力の入らない腰を押さえられ、逃れることができない。
「やめない。今夜はじっくりサービスするって決めたからな」
「い、いらないって・・・!!」
叫ぶシュエリを無視し、ハクヤは唇を湿らせ、まだ閉ざされた小さな蕾に何度も音を立てて口づけた。
「はんッ、は――」
吐息が変わる。鼻にかかる甘い悲鳴を心地よく聞きながら、ハクヤの口づけで切なく震え始めた扉を探るように、そっと舌先を差し入れてみた。
「ぁあ・・・・・・っ!」
きゅっ、と小気味良く閉まる蕾。まだ入り口にしか触れていないハクヤの舌ですら逃がすまいと、貪欲に締めつけてくる。
ハクヤも一瞬くらりと目眩いがした。もうすぐここを味わえると思うと、ぞくぞくする。
苛めるようにチロチロと入り口付近を舐めてやると、蕾が吸いついて来る。
「や、やだ、やぁあ・・・」
言葉とは裏腹に、奥へ奥へと誘う蕾。しばらく舌で愛していたが、だんだんと扉が開き始め、もう舌では足りないと言い出す。
頃合いを見はからって、そっと形の良い中指をあてがい扉を軽くつつくと、早く欲しいと言わんばかりにシュエリが震えた。
「わかったよ・・・」
愛しそうに微笑して、ハクヤは自分の指を舐めた。湿らせて通りをよくするために。
「な、ナニがわかったの・・・」
吐息を整える間もなく攻められて、掠れた声がまたそそる。
「ん・・・? こういうこと・・・な?」
言い終わるか終わらないうちに、ハクヤは濡らした中指をシュエリの蕾にあて、ツプ・・・とさしこんだ。
「あんッ!」
第二関節あたりまでゆるゆると入れると、ゆっくりとあやすように内壁を擦ってやる。
「あ、あう、あぁ・・・」
うっとりとした声を聞きながら、内側をかき混ぜる。すぐに入り口はほぐされ、もう一本欲しいとねだる。
そこで、人差し指もそっと差し込んで中指と交互に抜き差しすると、凄まじい締めつけがハクヤを襲った。
「あ・・・、は・・・はう・・・ッ」
嫌だ、という気力もなく、たった二本の指に翻弄されてしまう。
三本目の指をあてがうと、難なく飲み込まれ、先程よりも強く奥へ誘うように締めつけて来る。
「ッ・・・、少し・・・指が羨ましくなるな・・・」
妙な愚痴をこぼしてしまうほど、ハクや自身にも熱が走った。そろそろ堪えがたい。
シュエリから辛そうな表情が抜けたのを見て取って、ハクヤは指をそっと引き抜いた。
「あ・・・や・・・ッ」
無意識にねだったシュエリの甘い悲鳴が心地よい。
もう一度シュエリを仰向けに寝かせると、足をぐいと高く持ち上げ、
「いいな・・・?」
ハクヤは自分の楔を扉にそっとあてがうと、一気に蕾の中へ打ち込んだ。
「あ、あぁぁぁ――ッ」
指とは比べ物にならない鋼の熱を感じ、シュエリは無意識に腰を引いたが、ハクヤはそれを許さず、そのまま最奥まで貫いた。
「やぁあああ!」
それでも柔軟なシュエリの壁は、愛しい人間の欲望を受け入れ、絶対に逃がしたくないといった勢いですぐに締めつけ返して来る。
「く・・・」
油断すると飲み込まれそうだ。
後ろだけへの刺激でも、もう立ち上がったシュエリの印は涙のように先走る蜜を零す。
酷く扇情的な光景だった。
「シュエリ・・・ッ」
思わず、その印に手を伸ばして強く握ってやる。
「あ、だ、だめ・・・ぇ・・・ッ!!」
一気に貫かれた衝撃ともあいまって、それだけでシュエリは二度目の頂点を迎えた。
「あ、ああッ、はく・・・や・・・」
愛しい人の逞しい肩にしがみ付こうと手を伸ばすシュエリ。ハクヤはその手をすぐに引き寄せ、己の肩へまわしてやる。
「しっかり・・・しがみついてろよ・・・?」
「う・・・あ、ん・・・ッ」
同意だか嬌声だか分からない喘ぎをもらし、シュエリはハクヤの首にかじりつくように腕を回した。
同時に、ハクヤもシュエリの中をなぞるように、ゆっくりと行き来を始めた。
「は、あッ、あう、あンッ・・・」
幾度も幾度も角度を変え、締めつける内壁の全てを貪るように攻め上げる。
「はく・・・やぁ、ああん、は・・・んっ」
「シュエリ・・・」
楔を打ち込むたび、蕾は湿った悲鳴を漏らす。
シュエリの胸元と扉からともに鼓動を感じる。脈打つ自分の楔も、シュエリに感じ取られているはずだ。
「は・・・はくやの・・・が・・・っ」
シュエリの中を行き来する逞しい熱が、だんだんと速度を増す。
シュエリの切ない声も、甘い吐息も、汗ばんで艶めかしく張りつく髪も、堪えようとしてままならず震える躯も、全てがハクヤを虜にした。
「俺のが・・・?」
荒い吐息の下から問い返す。その先を聞きたい。言ってはもらえないだろうが。
「あッ、・・・め、もッ、もお・・・ぉッ」
もっと奥へ――もっと奥へ行きたい――。
男の躯に最奥はない。女と違って底なしだから、最も敏感なのは奥ではなく、周囲をぐるりと取り巻く壁だ。
シュエリの場合はそこを背から腹へ返すように突くと最も狂う。
「シュエリ・・・足を・・・」
ハクヤの手で胸元まで上げさせられた足を、少し水平に開く。
「え・・・やッ、な・・・にっ」
すると、ハクヤのものが触れる角度が変わり、この状態で抉るように突き上げると、
「は、アぁ・・・・・・ッ!!」
細い首筋をのけ反らせ、白い肩をこわばらせる。
「ココが、最もイイんだよな・・・?」
「や、そ、あンッ、そこ・・・ぃ、いあ、いああ・・・ッ!」
ハクヤの動きと共に、次々に襲う快楽を逃がすよう強く首を振る。荒れ狂う熱。蹂躙する電流。
もう自分の躯じゃない。
幾度となく駆け登って来る甘く熱い魔物――
「あ、もぉ、も・・・ッ、はく・・・やあッ、ゆるし・・・ッ」
「シュエリ・・・、いい、ぜ」
何度も、何度も、貪るようにシュエリの弱い箇所を突き上げ、思う様啼かせる。
逃がしきれない快楽が、涙となってシュエリの瞳から次々と溢れる。
「あ・・・はぁ・・・ッ、も・・・だ・・・めっ」
シュエリの大腿に力がこもり、気も狂いそうなほど締めつけて来る。この辺が限界だ。
ハクヤは己の楔を一度、シュエリから引き抜いた。
「やだッもっ――」
すぐに返って来た切ないいらえが終わらないうちに、奪われた快楽にわななく蕾に己をあてがい、
ハクヤは入り口から最奥までを一気に貪った。
「ハ、ァあぁぁ――ッ!!」
「ク・・・ッ――」
白い首をのけ反らせて頂点を刻んだシュエリと同時に、ハクヤも少年の中へ己の熱を放った。
より奥へ届けとばかりに――。
「は、ああ・・・あ・・・」
放心状態でくったりと目を閉じたシュエリを、荒い息を整えながら愛しげに見下ろしたハクヤは、柔らかく少年の髪を撫でて、そっと頬に口づけた。
「・・・は・・・くや・・・・・・」
いくらか理性の戻り始めた眼で少年は自分を組み敷いた青年を見上げ、
「気絶・・・するかと思った・・・」
「ああ・・・前にさせたら、後から嫌がっただろ・・・? 男として情けないって」
微笑しながら何度も髪を撫でてやる。
「・・・もしかして、手加減した・・・わけ・・・?」
それも悔しい、とそっぽを向いたシュエリに苦笑して、
「別に手加減した訳じゃねえよ。気絶させちまったら、もう一度続けてできないからな?」
にやりと笑ったハクヤに、ぎょっとしてシュエリは起き上がった。
しかし、鈍い熱を持った腰が言うことを聞かず、かくりと膝が崩れる。
「も・・・もうイヤだからね! 絶対イヤだから・・・!」
せめて視線だけででも威嚇できたらと、ハクヤを睨み返すシュエリ。そのきつい眼差しが、より目の前の青年を誘うとも知らずに。
「うーん、どうしようかなー。俺、一度しか達ってないしなー」
「ば・・・ッ」
慌てて逃げようとしたシュエリを軽くつかまえて抱き寄せる。
「ちょ・・・やだって・・・!」
もがくシュエリにクスクスと笑みを漏らし、
「安心しろよ、今日はもうしないから」
と、ハクヤは愛しい少年の右手の甲を引き寄せ、騎士のように口づけた。
情事の後、恒例になっている儀式だった。
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