アジトに予定より数日早く帰還できたブランクとジタンは、事の次第をバクーに報告した。 ボスは上機嫌だった。 「秘宝を盗まない」という結論を出した二人の教え子に、たいそう満足したようだった。 「でも、プリマビスタの補修費用は?」 とジタンが問うと、 「そんなもん、どこからでも捻出できる」 と歯切れの悪い返事が返ってきた。 どうにも腑に落ちないな・・・と、仕切りに訝るジタンとブランクを尻目に、扉の向こうで様子をうかがっていたルビィは、「山を乗り越えたんやなあ」と一人、納得していた。 「けど――、なんで秘宝は、壊れかけたベッドなんか二人に見せたんやろ?」 という疑問だけを残して・・・・・・。 その日の晩は満月だった。 アジトでは寝室が共同だということで、リンドブルムの宿屋など借りて、ブランクとジタンはご無沙汰だった互いの躯を求めあった。 「やっぱり――あんたがいい・・・」 「馬鹿野郎、俺だって当たり前だ」 華奢だが決して不健康ではない、綺麗に引き締まった相棒の瑞々しい躯を、ブランクはその唇と、舌とで、存分に味わう。 「あ、あ・・・っ」 普段は絶対に聞くことのできない、吐息混じりの甘い悲鳴。 年齢の割に、声変わりを迎えていないその軽やかな嬌声は、少女のものとはまた違った澄んだ艶を帯び、ブランクの耳に心地いい。 逸るブランクを制して、ジタンが視線をそらしながら懇願する。 「ブランク・・・なあ、指が・・・欲しいんだけど・・・」 彼の尻尾が、小さくぱたぱたと揺れる。もどかしいのだ。 「・・・珍しく甘えてくれるじゃねえか、お姫様。俺の言ったこと気にしてんのか?」 「そ、そうじゃないけど・・・秘宝の奴にさ、指を入れられる直前にやめてもらったから――」 ぴくり、とブランクが半眼になる。 「じゃあ何か? ズボンを降ろされるところくらいまでは許したってのか?」 「え、ちょっと、ブランク――!」 許さんとばかりに、ブランクは強引にジタンの足を開かせ、ジタン自身をすっぽりと口で咥え込んだ。 「あ・・・う・・・っ!」 「ったく、俺はニセ者のお前に指一本触れなかったっていうのに、お前の方はどこまでお悦しみだったんだ?」 ジタンのそれをゆっくりと焦らすように舐めあげながら、ブランクは空いた手で相棒の尻尾を握り、その先を軽く爪で引っかく。 「ぁあ・・・っ」 勿論ブランクは、ジタンが他人に躯を許すはずもないと確信していたが、腹の下に組み敷いた久しぶりの獲物を、少々いじめてみたかったのである。 「そりゃ・・・もう・・・すっげえ悦しませてもらったぜ・・・?」 だんだんと荒くなってきた息の下からのジタンの返事も勿論、嘘。 軽口のやり取りで、互いに相手を煽っているのである。 自分達も多少は性行為上の演出が上手になったなと、二人同時に、心の中でこっそりと感心した。 「指・・・欲しがってたよな?」 口でジタン自身を、右手で尻尾を弄びながら、左手で彼の蕾を攻めるつもりらしい。 「ブランク・・・」 コンデャ・パダから、無性に恋しかったブランクの指。 間違えるはずもない、まず中指が、昂ぶる期待に慎ましく震えるジタンの扉を、ゆっくりと侵していく。 「あ・・・あ・・・」 続いて人差し指、薬指、それぞれが別個の生き物のように、秘めやかに息づく空洞を蹂躙する。 「う・・・あ・・・っ」 それだけで達しそうだ。 だが、ここで堪えなきゃ男じゃない、などという少々矛盾した意地を見せ、ジタンはそのあどけなさの残る少女のような顔を艶やかに歪ませた。 「背徳的な気分になるな・・・」 言いながらブランクは、ジタンの足をさらに開かせ、己の楔をそろりとジタンの蕾にあてがった。 来る――。 ジタンは、相棒の逞しいそれの来訪を予感して、きつく瞳を閉じた。 ほどなく、鈍い熱とともに、雄々しい欲望が自分の中にゆっくりと侵入してきた。 「ブラン・・・ク・・・っ」 ゆっくり挿れてくれ、などという女のような甘えた台詞が言えるはずもなく、逸る相棒の楔は予想以上の早さでジタンの最奥に達した。 「ああっ・・・!」 ジタンのしまりの良い蕾の中を、獣が行き来する。 「あ、あッ、あぁ・・・ん・・・!」 猛々しいそれが内壁を擦る。 やみくもな熱が、何度も甘やかな快楽に変わるたび、理性が、意識が、遠のく――。 「おい、もう根をあげるんじゃねえだろうな?」 「だ・・・れ・・・が・・・ぁっ」 己を抱きしめる相棒の胸元からだけでなく、自分の蕾の中からもブランクの鼓動を感じる。徐々に早くなるそれを意識するだけで、ジタンはすぐにでも限界を迎えそうになった。 心地よくぱたぱたと揺れていたジタンの尻尾は、すでにそんな余裕もなく、ジタン自身の昂ぶりとともに小刻みに震えながら、だんだんと真っ直ぐに伸びていく。 彼の尾は、快楽を語るのに何よりも雄弁だと知っているブランクは、獲物の限界が近いことを知る。 「俺が達するまでに、二回イかせてやるよ」 ジタンが抗議の声をあげる前にブランクは己の唇でジタンの唇を塞ぎ、自分の楔をいっそう激しく愛しい獲物に打ち込んだ。 「あ――!」 ジタンの意識は白に支配され、次の瞬間、甘やかな闇の向こうに遠のいた。 「壊れかけたベッド・・・」 ジタンが呟いた。 結局、一度目に達した時点でジタンは気を失い、ブランクが彼を起こして再戦、その後、ジタンは三度、ブランクは二度、頂点を迎えた気がする。 双方とも、かなり欲求不満がたまっていたようだと、心の中で苦笑した。 「<契り>の秘宝が見せた、あの幻影の意味・・・。何となく分かった」 ぽつりと語る。 ブランクも言う。 「あまり分かりたくない気もするけどよ・・・分かったところで、俺にはジタン以外の相手、考えられないぜ」 最後の方は少し照れ臭そうに、だが、はっきりと聞き取れる強い声で告げた。 「オレだって覚悟してたもんな。あんたを受け入れたときから。オレ達がもっと大人になって――もし欲しくなったら、孤児院をあたってみるとかさ」 壊れかけたベッドは、ゆりかごではなかった。 <お前達が結ばれたところで、互いに躯を欲することは出来ても、子供を求めるのは叶わない――> そう忠告されたのだ。恐らくは。 「タンタラスだって孤児院みたいなもんだしな。嫌でもガキの面倒は、この先いくらでも見る羽目になるぜ」 言いながらジタンを抱き寄せたブランクは、まだ相棒の躯に、自分の押した幾つもの烙印が鮮やかに残っているのを見て―― 「もう1ラウンド・・・駄目か?」 「獣かお前は」 呆れながらブランクを押しのけたジタンは、秘宝の忠告とやらは実は、 <ヤりすぎてカラダ壊すなよ> なんてモノだったんじゃないかと、思い直した。 −終わり− |
終わりです〜。 Hシーンって・・・書き出すといくらでも続きます・・・(^^; ので、はしょったりしてます(笑)。 ええと、ブランクとジタンについて・・・。 ブランクは、私情に流されない盗賊です。 情に薄いわけではなく、自分をしっかり律せるタイプ。 ジタンは逆に、私情を武器にできる盗賊です。 あらゆる自分の心の流れを、(盗賊稼業のみならず、どんな事柄に対しても) 全て前向きに変換し、己の力とできるタイプ。 そんなイメージがあるので、今回のお話は、その辺を取り上げてみたかったんですが・・・。 |
BACK * 小説一覧へ戻る |